お台場ビーナスフォートのヒストリーガレージ

お台場ビーナスフォートのヒストリーガレージには数々のヒストリックカーが展示をされていますが、その車種は25年ほど前に私が座長となって決めました。
当時、トヨタに車種選定を依頼された電通にはその知識が無く、めぐりめぐって私のところに話が来ました。分厚い企画書にはヒストリーガレージ(当時はまだ名前は付いていませんでしたが)の設立趣旨が描かれていました。
それによりますと、車の世界を「未来ゾーン」「現在ゾーン」「過去ゾーン」の三展示に分け、トヨタが出資をして車にもっと興味を持ってもらうというような事が書いてありました。
「未来ゾーン」は例えば、コンセプトカーの出品、子供たちに未来の車を描かせる。「現在ゾーン」ではミニコースで販売中のトヨタ車の試乗などがあったようです。そして「過去ゾーン」では「トヨタ車に限らず、時代のエポックを作った車を展示する」が大きなテーマの一つでした。
その展示する車の条件は
1、予算枠がある。(いくらだったかは憶えていませんが2億円くらい?)
2、国産車、外国車は問わないが実車が入手できる市販車。
3、テーマにより効率よく、分類展示が出来ること(例えば今月はFF車特集、来月はオープンカー特集等)。
4、上記の条件で30台位。でした。
私は、当時GSCCというスポーツカークラブの会長をしておりましたので、メンバーを集めこのことを話すと「面白いからやろう」と無償で引き受けることに決定しました。
メンバーの中には博報堂東急エージェンシーの社員もいましたが、あえて加わることになりました。
選定はとても楽しい作業で、夕方電通の下請け会社の会議室に集まり議論しました。
車種選定の議論に入り、1番にフォードT型とVWビートルが挙げられましたが、T型は予算的にも実車的にも入手困難ということで、ビートルがノミネートされ、初期のスプリットウインドウがあればそれにしようという事になりました。
以下、国産車では、スバル360、1000。ホンダS500かS600、N360、CVCCのシビックトヨタは初代カローラ1100、初代クラウン、2000GT、スポーツ800。日産はフェアレディ(SPかSRかZ)、サニー1000、GTR(プリンス)、ブルーバード。マツダはロータリークーペかコスモスポーツをノミネート、その他三菱、ダイハツ、スズキからもギャランGTO-MR、コンパーノスパイダー、フロンテクーペなど議論しましたが、エポックメイキングではないとし、該当車なしとしました。
選定に議論が沸騰したのは外国車で、それは幾晩にも亘る大議論でした。
主だったノミネート車は国別で、イギリスは、ロールスロイス、ディムラー、ベントレージャガーロータス、MG、トライアンフオースチンアストンマーチン、モーリス、ウーズレー、ライレーなど。議論百出で最初に決まったのはジャガーEタイプとミニでしたが、ミニは850にするかクーパー1300にするかで議論となりました。
以下、比較的容易に決まったのは、アメリカでは、コルベット。フランスではシトロエン(トラクシオン・アバン、DS、2CVのどれか)、ルノー4CVかキャトル。ドイツではポルシェ911か356。BMWはノイエクラッセの内の1台。アウディはクワトロ。メルセデスでは300SLが出ましたが予算オーバーでボツという具合でした。
最も難しかったのはイタリア車で革新的な小メーカーが多数あったため、難航しました。もちろん最初に決まったのはフィアット500でしたが。フェラーリは予算的にも選びにくかったです。
ということで、1ヶ月で車種を決定して、電通に提出しました。
数ヵ月後、オープンセレモニーに非公式に招待されましたが意見が大いに反映されていたのが喜びでした。
いわく「50年代から70年代の車を展示している」としていますが、予算的に戦前の車は無理でしたので、後付けのコンセプトと思われます。